2019年3月17日に発表され、2019年夏にはゲノム編集食品の日本国内での販売開始が決まったなど最近話題の「ゲノム編集」。
ヌクレアーゼでゲノムの一部を簡単に切りはりできる最新技術です。
2019年4月22日には「ヒト受精卵のゲノム編集、遺伝病研究を容認」との報道もありました。
ゲノム編集は将来的には遺伝病などの対策ができると期待されています。
また、TBS系ドラマ『インハンド』(フィクション)第6話に放送された内容ではゲノム編集「CRISPR(クリスパー)」のヒトへの利用が話題にされました。
初めてのCRISPR対ヒト臨床試験は2016年末の中国四川省成都で進行性肺がん治療の臨床試験した。
遺伝子編集技術のCRISPERは、ドラマ同様編集後の遺伝子に予期せぬ異変が生じるリスクがあるため、
ドラマでは人間のゲノム編集をしている内容でしたが現在生物に関しての扱いは慎重です。
今回、山口県のYCAMという施設でイベントがあったのでご紹介します。
この記事はこんなあなたにおすすめ
- ゲノム編集に興味がある
- YCAMに興味がある
- パーソナルバイオに興味がある
目次
- 1 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」YCAMとは
- 2 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」プログラム概要&スケジュール
- 3 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」1日目
- 4 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」写真で見るゲノムをの読み方
- 5 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」2日目
- 6 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」3日目
- 7 YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」感想
- 8 参考
- 9 まとめ
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」YCAMとは
- バイオテクノロジーの応用をアート・教育・地域など、多様な切り口から研究開発
- 山口県15年前から内部の専門家と外部の専門家が一緒になって教育コンテンツを制作
- 2014年にバイオに携わるベンザさんとインドネシアでバイオハッカースペース創設
- 研究費用が以前は100億円だったが10万円まで落ちたことが要因でより手軽に研究が可能になった
- 食、健康
- 2015年からバイオの研究室ができた
- 2016年キッチンから始めるバイオ
- パンと酵母
- メタゲノム解析
- 市内の農場900〜1,000 YCAMの埃から1,300種の菌
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」プログラム概要&スケジュール
プログラム概要&スケジュール
1日目実験&DNA読む
- 10:00 受付
- 10:30 オリエンテーション&エクササイズ Contact Gonzo
- 11:30 自己紹介
- 12:00 昼食(非ゲノム弁当)、ミニレクチャー
- 13:00 実験 DNA 抽出、PCR
- 15:30 トーク フィリップ・ボーイング氏
- 17:00 実験、シーケンシーイング(〜22:45)
- 23:00 懇親会@8TRACKS
2日目レクチャー&ワークショップ
- 09:30 エクササイズ
- レクチャー・ワークショップ「バイオインフォマティクス」片山敏明氏
- 12:00 昼食(ゲノム弁当)ミニレクチャー
- 13:00 トーク セバスチャン・コシオバ氏
- 15:30 レクチャー「バイオアートとDIYバイオ」岩崎秀雄氏
- 17:00 ワークショップ「生命倫理」金田大也氏
- 18:30 ワールドカフェ
- 19:30 グループワークメンバー決め
3日目グループワーク&プレゼン
- 09:30 エクササイズ
- 10:00 グループワーク
- 12:00 昼食(ゲノム弁当)ミニレクチャー
- 13:00 グループワーク
- 14:50 プレゼンテーション&講評
- 16:50 記念撮影
- 17:00 解散
- 17:30 ラボミニツアー
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」1日目
■1日目 実験
- エクササイズ
- contact Gonzo | こんたくと・ごんぞ…アーティスト・ユニット
- 2006年に垣尾優と塚原悠也により結成。肉体の衝突を起点とする独自の牧歌的崇高論を構築し、即興的なパフォーマンス作品や映像、写真作品の制作、マガジンの編集などを行う。contact Gonzoとは、集団の名称であると同時に彼らが実践する方法論の名称でもあり、その背後には山がある。現在、様々な果物を時速100キロで身体に打ち込む行為や山中の斜面を滑り降りる「山サーフィン」を開発。
- 木の枝で会場の人間同士を繋ぐ
- 手などで握らずにあくまで体同士で挟む
- 全員繋がる
- 2,3人以上と繋がる
- 感想:子供の頃にした意味のない遊びのようでいながら木の棒で人を繋ぐことが化学の配列や有機物を思い出すアカデミックなのか何も考えていないのかわからないエクササイズで朝から考えさせられた
- DNA抽出実験
- プロトコルhttps://github.com/YCAMInterlab/BioTIPS/blob/master/2018.m
- 津田和俊 | つだ・かずとし…研究者これからの暮らしかたや生きのびるための智恵に関心があり、特にものの流れや循環に着目しながら、自然環境と人との関係性について考察している。2011年から大阪大学創造工学センター助教として、工学設計や適正技術の教育プログラムの実施や、資源循環やサステナブルデザインに関する研究をおこなっている。2010年から「つくりかたの未来」を考えるファブラボのネットワークに参加し、2013年にその拠点のひとつとしてファブラボ北加賀屋(大阪市住之江区)を共同設立。2014年から、YCAMコラボレーター。共著に『FABに何が可能か「つくりながら生きる」21世紀の野生の思考』など
- DNAの「読み/Read」
- 6つのグループに分かれて実験(各テーブル4〜6名、2人1組)
- DNAを抽出 90分
- DNAをPCRで増幅する 30分(+90分)
- DNAを精製する 30分
- DNAを定量する 15分
- DNAをシーケンシングする 90分
- 注意など
- 「書き」に関しては拡散防止措置が必要
- 安全キャビネットで滅菌操作をしながら行う
- 安全確保の重要性とコンタミネーション禁止(混ざらないように)
- 細胞膜を壊すのがDNA抽出
- ゲノムには完全に解析されているゲノムとドラフトゲノムがあるが今回は解明されているゲノムで実験
- 実験
- 各グループでゲノムが解析されている食材のゲノムを抽出
- ゲノム弁当
- ベジタブル喫茶 Toy Toy…山口市内の料理店。旬の野菜をふんだんに使ったランチの他、お弁当、ケータリング、カレーやクラフトビールなど多岐にわたって食を追求している。2017年から、YCAMバイオ・リサーチと、ゲノムが解読された生物のみを食材に用いた「ゲノム弁当」企画で共同制作をしている。
- Bento Lab開発者”Gentics for Everyone:The journey towards accessible bioscience”
- Philipp Boeing|フィリップ・ボーイング…研究者。世界初のラップトップサイズの簡易DNAラボラトリー「Bento Lab」の開発をおこなう「Bento Bioworks」の共同創立者。バイオテクノロジーを誰もがアクセスしやすいものにすることに取り組んでいる。東京に拠点に活躍するアーティスティック・リサーチ・フレームワーク「BCL」にも参加している。
https://www.bento.bio/files/ycam-interlab3-slides.pdf
キックスターターのキャンペーンで15万ポンドの資金調達に成功し、Bebto Laboを生産することができるようになった
https://www.kickstarter.com/projects/bentolab/bento-lab-a-dna-laboratory-for-everybody/description
Bento Labを使った研究で有名な2人
- GianpaoloさんのYoutubeが一番有名(クラフトビールの酵母の系統図をたどっていく)
https://youtu.be/NczVyqDsVBE - 菌類学できのこの研究をしているDavidさんも有名
- ATGC
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」写真で見るゲノムをの読み方
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」2日目
■2日目「書き」「生命倫理」
- エクササイズ
- ランダム体の一部を人にぶつけながら歩く
- 3グループに分かれ目をつむりながら声を出して歩いて参加者が一直線になるようにする
- 感想:人に敢えてぶつかっていくことが生命の誕生を表しているのかあるいはなんの意味もないのか考えさせられた
- 目を瞑って声に頼ることで普段使わない空間把握能力や五感が研ぎ澄まされた
- レクチャー&ワークショップ 「バイオインフォマティックス」
- 片山俊明氏|かたやまとしあき…研究者。生命科学・医科学データベースを統合的に利用するための研究を進めている。バイオインフォマティクス用のライブラリ「BioRuby」を始め、「TogoDB」、「TogoWS」、「TogoGenome」、「TogoVar」などの各種データベースサービスを開発するとともに、国際会議 BioHackathonを10年間にわたって開催、YCAMと共同でゲノム弁当の企画もおこなっている。
https://github.com/ktym/GenomeBento/tree/master/images - 前日に抽出したゲノムを検証
- トマトの抽出をしたが、結果ジャガイモとナスの要素が検出された
- ジャガイモとナスはトマトと同じナス科なのでトマトまではたどり着けなかったが近くまで立証できた
- 約18グループのうち、正しく検出できたのはひよこ豆と白菜の2グループのみだったので初心者の成功確率は約11%
- トマトの抽出をしたが、結果ジャガイモとナスの要素が検出された
- 片山俊明氏|かたやまとしあき…研究者。生命科学・医科学データベースを統合的に利用するための研究を進めている。バイオインフォマティクス用のライブラリ「BioRuby」を始め、「TogoDB」、「TogoWS」、「TogoGenome」、「TogoVar」などの各種データベースサービスを開発するとともに、国際会議 BioHackathonを10年間にわたって開催、YCAMと共同でゲノム弁当の企画もおこなっている。
- レクチャー
“Small Thoughtful Science”- Sebastian Cocioba|セバスチャン・コシオバ…研究者。遺伝子工学を用いた新しい花のデザインの研究者。現在は、MITメディアラボの委託研究者。その他、子どもたちにバイオテクノロジーを学ぶ機会を提供するラボ「Binomica Labs」のディレクターも兼務。分子遺伝工学の初心者から研究に従事する学生まで、オープンソースを開発しながら、自らの発見や気づきから自主的に学んでいくカリキュラムを提供している。
http://biodesignchallenge.org/sva2016- 合成生物学、ゲノム編集
- アマチュア科学者(独学)
- バイオノミックラボを作って誰でも実験ができるようにしたことでフェローとして学位をとる立場になった
- 分子工学やゲノムシークエンスをとる
- 通常のラボとは違う
- 家の寝室で実験をしている
- 生命を維持するために必要なものが揃っている
- 通常の大学のラボはバイオセーフティレベルが定められているが、家にはレベル1のものしかない
- 部屋に植物が生育している1日24時間1週間毎日観察して15年
- 植物は物心着いてからずっと興味があったこと
- Sebastian Cocioba|セバスチャン・コシオバ…研究者。遺伝子工学を用いた新しい花のデザインの研究者。現在は、MITメディアラボの委託研究者。その他、子どもたちにバイオテクノロジーを学ぶ機会を提供するラボ「Binomica Labs」のディレクターも兼務。分子遺伝工学の初心者から研究に従事する学生まで、オープンソースを開発しながら、自らの発見や気づきから自主的に学んでいくカリキュラムを提供している。
- レクチャー(資料:スライドフォルダに格納)
「バイオアートとDIYバイオ:alternativeな生命探求の形を巡って」- 岩崎秀雄氏…研究者。生命美学プラットフォームmetaPhorest主宰、早稲田大学理工学術院教授。生物時計や形態形成などを研究。1971年生。合成生物学分野の「細胞を創る」研究会の創設にも関わり、2016年には会長。著書に『〈生命〉とは何だろうかー表現する生物学、思考する芸術』
http://www.waseda.jp/sem-iwasakilab/images/aPrayer_B.png
- 岩崎秀雄氏…研究者。生命美学プラットフォームmetaPhorest主宰、早稲田大学理工学術院教授。生物時計や形態形成などを研究。1971年生。合成生物学分野の「細胞を創る」研究会の創設にも関わり、2016年には会長。著書に『〈生命〉とは何だろうかー表現する生物学、思考する芸術』
http://festival.j-mediaarts.jp/works/art/culturing-papercut/
身近になったバイオ
- YCAM日本初の遺伝子組み換えができるバイオラボ
- 渋谷Fab cafe内バイオクラブ
http://www.fablabshibuya.org
-
- 分子生物学に関する自己倫理規定
- 様々な懸念・留意事項
- 安全性
- ルール・規制
- 倫理的・文化的・社会的問題
- 情報・メディアに関する課題
- ワークショップ
「生命倫理」(資料:スライドフォルダに格納)- 会田大也氏 | あいだだいや…ミュージアム・エデュケーター1976年生まれ。現代美術、メディアアートを学んだのち、教育普及担当として就職した山口情報芸術センター[YCAM]にて、11年間市民参加型企画やオリジナルワークショップ、公園型展示プロジェクトを企画運営する。東京大学大学院にて博士課程の学生へ向けてワークショップデザインについて教える傍ら、子供向け体験学習の企画をサポートする。
- グループワーク(4人ひと組)
- ブラインド鑑賞
- モナリザの絵を10秒見て記憶を頼りに描写
- どんな絵だったか
- 手はどこに?
- 髪型は?
- 眉毛は?
- どこにいた?
- 議論のための言葉トレーニング(12分交代)
- グループの中で2人はスライドの絵をみる
- 残りの2人は絵を見ないで目を瞑ったまま
- 絵を見ていない人に絵を伝える
- 質問はOK
- モナリザの絵を10秒見て記憶を頼りに描写
- ワールドカフェ
- グループワーク
- 4,5人のグループで岩崎氏の倫理の中から1つのトピックを15分間で語り合う
- ゲノム編集の食べ物の今後は?
- 不老不死とは?
- 明日の発表にグループを決めて解散
- 自分が気になるトピック3点と得意なこと3点を紙に書いて歩いてマッチング相手を探す
- 徹夜しない程度に事前打ち合わせ可能
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」3日目
■3日目「応用可能性の検討」
- エクササイズ
- グループでなるべく複雑に木の棒で繋がる
- ランダムに歩きながら人とぶつかる
- 笑わない、転がってもいい
- 感想:「自分が何をしているのかよりわからなくしてほしい」という要求に従った
- 日常生活では求められない要求であったがインプットで頭がいっぱいになっていたのでいい息抜きにもなったし物事を意識して俯瞰で見られる時間だった
- グループワーク
- 4〜6人の6つのグループに分かれゲノムを実装させるアイデアを構築
- 実現方法を考える
- 岩崎氏のレクチャーやグループディスカッションで語った倫理的問題点も提起
- 午後に5分間プレゼン
- ランチミニレクチャー
- ゲノム弁当のきっかけ
- YCAMと赤田氏の出会い、これまでのイベント
- 赤田倫治 | あかだりんじ…研究者。1961年生まれ。岡山県出身。広島大学発酵工学教室で酵母に出会う。専門は遺伝子工学。2003年には世界初の遺伝子組換え技術を使ったお酒を販売する。その後、バイオエタノールやヒトの病気も酵母で研究している。山口大学工学部応用化学科教授。酵母のうまい話に乗っています。
- プレゼンテーション&講評会
- においカメラ
- 嗅覚を使いより解像度の高い記憶を記録
- ゲノムゲーム
- 免疫粘土
- 山道を通った子供の方が菌がついて免疫力が高まることから反抗菌
- FUNgisizer
- ゲノムの配列を使った音楽と画像VJ
- 体内グッドバクテリア交換計画
- 乳酸菌の交換
- COMPANION BIOS
- 植物に自分のDNAを入れる
- 美術館での展示
- ラボ体験ワークショップ
- 食べゲノムログ
- ゲノムマッチングサイト
- ゲノムバー
- 人間のDNAを入れたトマトを食べるかの倫理感
- Hair Trade
- 脱毛や美容室で廃棄されている髪をウィッグで有効利用
- ゲノム解析長期入院ツアー
- ゲノム解析するアーユルベーダ旅行会社
- ゲノム道
- 実験の心得に茶道の作法を取り入れる
- 『食べる動物園』
- 動物園で培養肉を食べる
- ペットと乾杯
- ペットと飲みニケーション
- においカメラ
YCAM InterLab Camp vol.3「パーソナルバイオ」感想
参加者
- 参加者は下は高校3年生(3人)から上は社会人(おそらく50代くらいまで)
- 社会人はほぼみんな職業についている方が多い
- 外国人参加者は4名(ブラジル人研究者、韓国人教育者、スウェーデンと日本のハーフ高校生)中で日本語が難しい人は1名
- 大学生はデザイン系もしくはバイオ専攻で学部生、院生どちらもで10名ほど
- 社会人は仕事として、というより趣味で参加の方が多い印象
- アート系4名、エンジニア4名、一般企業、研究者5名、教育関係者など
- ライター・メディア関連約5名
- 知識に関しては研究をしていて詳しい人から初めてバイオに関わる人までバラバラであった
- 東京からきている人がほとんど、大学は九州大や大阪
実験について
- 慣れていれば2時間半くらいでできる工程らしいがレクチャーをしながらでほぼ半日がかりになった
- 解析する機械(10万くらい)は各組みに手配されていたが、少量ずつ使用する高額(10万円くらい)の薬剤もあり、全体でシェアしたため、より時間がかかった
- スタッフは皆熱心で親切だった
- 各テーブルに1名チューターのように相談できる人がついてくれた(参加者で詳しい人も事前にチューターを依頼されていた)
- 2人1組だったので工程を交互に行った
- 使用する資材はとても少なかったので温度管理などをしっかりやれば家でもできる
- 「以前よりも簡単」とはいうが未経験者にとっては結構大変、人によって「めんどくさい」と思えるくらいに地味な工程が続くので、一般普及は本当に好きな人にだけになりそう
レクチャーについて
- 今回外国からの講師も招いて、バイオに様々な角度から携わる第一線の方々にお話を聞けてとても勉強になった
- 専門的なお話は初心者には難しいところもあった
- 講師陣はバイオの専門家、アートの専門家、DIYバイオの1人者など様々な角度でバイオに携わっておりバラエティ豊かであった
ワークショップについて
- 様々なバッググラウンドの人と交流し、意見を出し合うことでより視野を広げてバイオの可能性を考えることができた
- 最近の高校生は中学校時代にブロッコリーのDNAを抽出する実験をすると聞いて自分の中学時代との違いに驚いた
- バイオは人間に関わるトピックなため、話題に出るときにどうしても「生命」「倫理」といった話題が一緒に出てくる
- 最先端の技術は正しく扱えば非常に役に立つので、正しく伝える方法を模索し続けたい
ゲノム弁当について
- 初日はゲノムが解析されていないお弁当
- 2日目は初期にゲノムが解析された食材を使ったお弁当
- 3日目は直近まで年度ごとに解析された食材を分けたブッフェ
- 初日は普通のお弁当で、以降少ない品目から去年までにどれだけの食材のゲノムが解析されたかを舌で体感
- スパイスはほとんどゲノム解析されていないので今のゲノム弁当は味気なかった
YCAMについて
- 図書館が併設された平地の公園の中にあり、地域の住民にも親しまれている
- 「山口唯一の最先端な場所」と呼ばれていた
- 近隣は湯田温泉、山口大学があり、観光資源はあまり豊富ではなく大学生の人口は毎年一定であるが人口は緩やかに減少している
スタッフ・講師陣について
- 講師陣12名(内ゲストスピーカー5名、外国人2名)
- 伊藤隆之(いとう・たかゆき)…R&Dディレクター。専門分野:音響デザイン、ソフトウェア開発。主にYCAMの研究開発プロジェクト全般のディレクションを担当。インターラボを今よりもさらに開かれた「実験場」へと発展させ、市民をはじめ多くの人々を巻き込みながら高い創造力を発揮できるよう、現場仕事からマネージメントまでさまざまなアプローチを試みている。
- 菅沼聖(すがぬま・きよし)…エデュケーター。専門分野:鑑賞教育、ワークショップ開発。2009年5月にYCAMのスタッフに着任。オリジナル・ワークショップの開発やファシリテーション、「コロガル公園シリーズ」の制作など、教育普及事業全般および地域資源の活用に関する研究開発プロジェクトの企画を担当。
- 高原文江(たかはら・ふみえ)…照明デザイナー。2008年4月、YCAMのスタッフに着任。展覧会や公演など、YCAMの主催事業全般における照明デザインとオペレーションを担当。作品のクオリティを高めるために構想段階から制作に関わること、またジャンルを越境することの重要性を意識しながら、業務にあたっている。
- スタッフ20人以上
- エクササイズ Contact Gonzo 3名
- ゲノム弁当制作 Toy Toy
- 通訳1名(外国人参加者は講演イヤフォン対応、ワークショップ時には専属フォロー)
- スタッフも講師陣も非常に気さくで熱心だった
- 四角い会場の中で常時会場を見て回っているスタッフは、5名ほどでその他サイドの席でフォロー(もしくは観覧)しているスタッフが10名ほど
- 講師の選定は人柄も大きく寄与している
- ジャンル的に「バイオインフォマティクス」「DIYバイオ」「Bento Lab」「バイオ×アート」など幅広い分野の講師を招聘
参加者の感想
- バイオは初心者という方も多かったが、スタッフも熱心で手厚かったので参加者の感想では満足度が高かった印象
- お昼のお弁当や懇親会など参加者同士で話せる時間もあって良かった
- スタッフの対応が良かったことも評判が良かった
- インプットは難しい内容も多かったが実験の時間や、グループワークの時間やアウトプットの時間もあり、理解が深まった
- 山口で軟禁状態だったことで、途中で帰る人もおらず集中できた
- 外国人参加者もいたり、年齢もバックグラウンドもバラバラだったのが良かった
3日間で到達できる点
- 全くの実験初心者として参加したが、トマトのDNA抽出に成功し感無量であった
- 実際に家でできるかと言われれば機材が必要なので最低でも50万円ほどかかる見込み
- 解析に関してはダウンロードしなければならないものがあり、自前のPCで自由に見ることができず、グループ共有PC一台だったので再現性が低いように感じた
- その後のレクチャーなどが結構タイトだったので咀嚼することが困難であった
- 倫理面でのディスカッションやグループワークは全員がアウトプットしやすい内容であったが専門性によってやはり知識にばらつきが出た
会場に求められる要因
- エクササイズを開催の際にはある程度の広さ
- レクチャーが共有できるスクリーン、机、配線
- グループワークができる机、椅子、配線
- 実験をやる場合は実験機器を置けるスペース
- 合宿方式の方が集中できるので休憩できるスペースや飲食できるところ
ファシリテーターに求められること
- 実験など時間がかかる工程があるため、事前準備と最中参加者フォローに気を配れる人だと良い
- レベルが様々なので難しいこともわかりやすく伝えられること
- 愛されキャラクターであれば時間が押してもいやに思われない
- 人柄と熱心さ
一般向けに有効なバイオの説明アプローチ
- 専門用語だけでなく一般的にわかりやすい言葉を使う
- 事前に資料もしくはスケジュールの共有をして少し予習できる状態だとなお良い
- 説明だけでなく参加者同士でかみくだいて考える時間を作る
よかった点
- スタッフがとにかく気さくで面倒見が良かったので困った時にすぐに相談できた
- 缶詰だったので集中できた
- 初心者から研究者レベルまで一堂に会したが変に上下関係などなく忌憚なく話し合えた
- 毎朝、体を使ったコミュニケーションができるエクササイズからスタートしたので参加者同士距離が近づきやすかったし、ウォームアップできた
- ゲストスピーカーのバックグラウンドも様々で、バイオをいろんな方向から考えられた
- 実験機材が事前にテーブルに用意されていたのでスムーズだった
- 大きな研究施設でなくとも実験ができることがわかり、今後の活用方法に関して明るい展望を見出せた
- 邪魔にならないアートな音楽が流れていた
- 人数も多すぎず少なすぎず偏りがなかったので議論しやすかった
改善した方が良いと思ったこと
初日の終了時間が20時のところ23時近くまで実験の時間がかかった
- 原因として、説明をしながら慎重に進めていたこと(良い点でもある)
- 2名ずつの班18組ほどが同時に実験をした中で機器を同時に使う工程があったり、試薬を分け合う工程があったことによる時間のロスが挙げられる
- 実際慣れている人が行えば2時間半ほどで終わる実験とのことなので時間がたくさんかかってしまうとDIYバイオが「手軽に誰でもできる」感を歌っているのに「なんだか大変そう」という印象になってしまう
- 2日目の朝の解析が自前のPCでできるはずが事前にUIが共有されておらず1つの机で1つのPCでしか見られなかったこと
- 少し専門的すぎて初心者にはハードルが高いように感じた
考察
- 運営のボトルネックになるポイントは内容量に関しての時間のかかり方
- メディアの方の参加も多く見られため、SIPスマートバイオで同様のイベントを開催できれば消費者や企業に知ってもらうキッカケになる
- 事前に自己紹介のスライドを共有サイトで募っていたので、参加者もどんな人が来るのか覗き見れて心の準備ができた
- 朝一番のエクササイズでは体を使って他人と樹を介して繋がったり、物理的にぶつかり合ったりすることで参加者の距離感を物理的な距離から縮めていったことにより、その後の共同作業やグループワークに入りやすい効果があったと思う
- グループワークでは「生命とは」など道徳、倫理に関して真剣に語り合う時間もあり、国民・一般・学生向けのコミュニケーション表現や議論の作り方に参考にできる
- 生命倫理に関しては4名のグループで絵画の口頭説明をした 2名は目隠し、残りの2名で口頭で説明してその後確認する、というところから始まり、人間の認識は人によって全然違うこと、視点の違い、自分にとっての当たり前が相手にとっての当たり前ではないこと、など自分の思考の癖などを客観的に見られるいい機会であった
- 4,5人の6グループで15分間1つの議題について語り合い、1人が残って議題を継承するシステムが取られ、いろんな人とランダムな議題について語れるところが面白かった
- 制限時間があったことも間延びしない要因である
- 参加者が一番盛り上がったのは初日のゲノム抽出ができた時、最終日のプレゼンの時、エクササイズの時のように見えた レクチャーよりも実際に体験するときのほうが盛り上がりは大きい
- 辛いところは実験に時間がかかったこと、長時間缶詰だったこと、2日目の解析が初心者には少し難しすぎたことのように思える
- DIYバイオ/パーソナルバイオの進展を身近に感じてわかったことはアメリカでは10歳の子供も初めていたりする一方で日本は自分でやる人がまだまだ少なく、外国からは遅れをとっているのかなということ
- これからもっと機材が安くなれば参入が増えて来ること
- 法規制などの問題
- バイオの研究者だけでなく、伝わり方によってはポケモンGOのように収集癖がある人にDNA収集などが流行したら一般にも広く研究が浸透したり、もっと身近になれば一気に研究も加速しそう
- 未知であった領域が以前より手軽に始められることによるワクワク感
- 現在中学校でブロッコリーからDNAを抽出する実験が行われている学校もあるとのことなので、今の大人より若者の方が知識があるのかもしれない
- 逆に「遺伝子操作は怖い」と漠然と教わってきた中高年などへは言葉を慎重に選ばないと間違って伝わる可能性がある
- ライターが記事を書く際に「ゲノム」だとクリック数が少ないが「遺伝子」だとクリック数が上がるのでゲノムの話を書く際もタイトルが遺伝子に書き換えられるメディアもある(※オフレコ:Yahoo!ニュース)
- メディアは面白い、話題になるセンセーショナルなことでないと取り上げないのでそこから誤解を増幅する可能性もあるので正式な情報を正しく伝える配慮が必要
- 会場に求められることはエクササイズをやるのであればある程度の広さが好ましい
- また講師陣もスタッフの人柄で引き受けたとの話を聞いたのでスタッフの熱意と人柄が大事
- 遅い時間でも懇親会の参加率が高かったのでこの会を通じて横の繋がりを求めている人も多い
- 特に社会人にとってまだまだ知っている人、興味がある人が限られた分野のように感じた
- 内容が盛りだくさんになるので咀嚼する時間を考えると可能であれば各週末4回、5回の講座のようにしても良さそうだが全部参加できる人が少なくなりそう
- 実験の時間をもっと効率よくできるとよりスムーズになりそう
- バイオ×アートでYCAMという最先端でおしゃれなイメージがあったので「授業」「勉強」感が良い意味でなかったところが良かった
参考
https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/
http://raptorx.uchicago.edu/
NHKクローズアップ現代
https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4149/index.html
バクテリア化粧品
https://motherdirt.com
トイトイさんから、ゲノム弁当の補足
ポテトサラダhttps://youtu.be/DFG9qqlQ56Y
胡椒・設計図https://youtu.be/kpYeyT11vEw
落語とゲノム弁当https://youtu.be/bMGH1ivNAJM
八景島シーパラダイス食育http://www.seaparadise.co.jp/aquaresorts/umifarm/facility/shokuikuzone.html
カニバリズム https://en.m.wikipedia.org/wiki/Saturn_Devouring_His_Son
セレブの肉を食べるhttp://www.bitelabs.org
ゲノム編集に関しての記事が多く発見されるサイト
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/54910
拒絶されにくいiPS細胞、ゲノム編集で作製成功(3月8日)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190308/k10011839511000.html
他人のウンチで病気を治す腸内フローラhttps://www.nishinippon.co.jp/feature/power_of_food/article/405969/
ジャンクDNAを入れてDNAプライバシーを消す試薬(バイオアートプロジェクトです)
https://deweyhagborg.com/projects/invisible
人間のDNAを入れた樹
https://forbesjapan.com/articles/detail/13435/1/1/1
鶏のオスメス判別キット
https://iimio.thebase.in/items/10155578
NHK 培養肉
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190304/k10011835101000.html
日本の培養肉Shojinmeat project
https://shojinmeat.com/wordpress/
https://sp.live.nicovideo.jp/watch/lv318605360
YCAM他メディア告知
https://makezine.jp/blog/2019/01/ycam-interlab-camp-vol3.html
http://artscape.jp/exhibition/art-flash-news/2018/10152014_21045.html
https://www.bioweb.ne.jp/mid_board/stg_info/id_4499/
バイオクラブ
http://bioclub.org
2019年1月DNA抽出イベント
(東京渋谷2日間コース:定員5名満席、12,000円)
http://bioclub.org/event/biotechworkshop01
2018年バイオクラブでのイベントバイオキャンプ
「BioCamp: Gardens as ‘Biotechnik’」
https://awrd.com/blog/2017/11/biocamp
参加者のレポート
Takramの伊東とYCAMにゆかりのある緒方さんhttps://soundcloud.com/takramcast/ycam-interlab-camp-vol3
参加者池田さんのブログ記事
http://ikekou.jp/blog/archives/4525
参加者の感想
・バイオ編集が民主化してきている
・プログラムがすごくよく練られていて各日それぞれ達成感がある
・DNAを読むのはめちゃくちゃ大変だけど自宅でできるようになっているのがすごい
・ワークショップには色々ネタが仕込まれていてその中に夜中の1時から作っているゲノム弁当があり、その食材に関してゲノムを読んだ
・ゲノムの抽出は食材をドライアイスと合わせてゴリゴリ砕いてオリジナルキットを使ってマイクロミリリットル単位で10行程くらい手順をこなしていく
・8000Gの遠心分離機や温めたり冷やしたりの全行程をまとめてできるBento labという機器を使用する(クラウドファウンディングのキックスターターを使用した製作者のフィリップさんの講演もあった)
・遠心分離機の音がすごい
・ブンブンごまが実は遠心分離機として性能が良くて実験にも使える
・DNAを取り出す工程がお昼明けから始まって終わったのが夜の11時までかかっても懇親会もあって深夜1時まででなかなかタフ
・初日の最後にDNAを読み始めるところまで行けて、その時の参加者の高揚感がすごかった
・次の日の朝にいいところまで読めて解析できる
・白菜はゲノム解読済みなのでリファレンスに合わせてコンソールでターミナルをいじる
・バラバラになったDNAの位置を照らし合わせるオープンソースのソフトウェアを駆使する
・白菜らしきDNAもあるけど同時にキャベツも人参もメロンもマッチした、などと出てくる
・2日目はレクチャーで地上最強の生物のクマムシのゲノムを解読した片山さん、海の貝の青色を抽出して真っ青のバラを作る実験などDNA解析を使ったバイオアートをやっているバイオサイエンティストのセバスチャン、メディア芸術祭で受賞されたバイオアートの岩崎さん、生命倫理の会田さん
・バイオは危険なことがあるのでレギュレーションを決めるためにルールを決めなければいけないため、自分たちの言葉で説明するためのワークショップなど
・3日目はグループワークの発表
・インドで伝統医療をやっている人のチームで自分の遺伝情報がわかった上で治療と予防の医療を届ける会社を作る提案
・バイオオリエンティックなアーユルヴェーダのツアー
・自分たちの中の満足感は高かったがスペキュラティブすぎて質疑応答で質問がなかったので爆笑した
・他のグループはDNA抽出するための工程が茶道に似ているのでDNA道
・乳酸菌を集めてシェアするプロジェクト
・ウィッグを作る時のヘアトレードをフェアにするために培養して人工的な髪を抽出できるようにする
・参加者もアート、編集者、スーパー高校生などがいて面白かった
・3日間はなかなか仕事をしていると難しいのでYCAMでどっぷり学べるのが面白かった
・サポートスタッフがすごく優秀で1テーブルに1スタッフいて救命センターのような感じで実験機材、プレゼンサポート、お弁当のフォローもしてくれる
・裏側の準備や後片付けには頭がさがる
・基本的にオープンにする前提なのでスラックで情報共有したりこのワークショップに出たことが5年後10年後に資産になるんじゃないかな
・3年前くらいにYCAMに行った時にバイオが始まった感じだったがそこからワークショップまでこぎつけていてスタッフもパワフルで最先端
・テーマを決めてやって面白い人が集まる風土が面白いと肌で実感できた
・Takramでも2泊3日くらいで行きたい
日時
2019年3月1日10:30〜22:30 DNAを「読む」、レクチャー
2019年3月2日9:30〜20:00 DNA「書き」「生命倫理」レクチャー
2019年3月3日9:30〜20:00 ワークショップ&プレゼン&講評
場所 YCAM(山口情報芸術センター)
主催者 公益財団法人山口市文化振興財団
https://www.ycfcp.or.jp
URL https://www.ycam.jp/events/2019/ycam-interlab-camp-vol3/
https://www.ycam.jp/asset/pdf/press-release/2018/ycam-interlab-camp-vol3.pdf
実施内容
3日間約30時間のワークショップで前半は講師陣からのインプット、後半は参加者のアウトプットでパーソナルバイオテクノロジー応用可能性を探求する。
ゲノム抽出実験、ワークショップ、レクチャー、プレゼン&講評などアイデア、実現可能性、倫理面の問題まで実装の際にどうなるかまでを考察
参加者 約36名(うち高校生3名、大学生9人、その他観覧者)
参加費 30,000円 懇親会4,000円 ゲノム弁当1,000円/日
http://wiki.lifesciencedb.jp/mw/GenomeBentoProject
ゲノム弁当制作 ベジタブル喫茶 Toy Toy
http://vegebeer.jugem.jp
まとめ
- 3日の講義で集中して技術的なことから倫理的なところまで同時に最新の情報を得られ、また参加者との議論もできて初心者が参加しても大変有意義なワークショップだった
- 解析など事前共有をもっとした方がスムーズになると思えることがあった
- 語りたくなるような自分の頭で考えさせる内容が素晴らしかった
では、また🌟