5月19日にアメリカで報道された大富豪の投資家ロバート・スミス氏が自身の卒業式でスピーチをした際に、同じ日に大学を卒業する「2019年の卒業生約400人に4,000万ドル(総額約44億円)に上る見通しの学生ローンを肩代わりする」と発表して話題だ。
また、5月23日には12年ぶりに来日したイタリアのファッションデザイナー、ジョルジオ・アルマーニ氏(84)が奨学金を送った日本人の学生と対面した。
アルマーニ氏は2011年東日本大震災後に「ジョルジオ・アルマーニ奨学生」制度を設立。日本ユネスコ協会連盟を通じて、2011年から3年間、毎月2万円を被災した岩手県と宮城県の学生135人に支給した。
世界各国で時々このように大きなお金をポンっと寄付する大富豪が話題だ。
一体なぜ彼らは多額のお金を寄付するのだろうか?
この記事はこんなあなたにおすすめ
- 大富豪はなんで寄付するのか知りたい
- 大富豪の成功の秘訣を知りたい
- 自分にもできる寄付はあるのか知りたい
目次
学生ローンを肩代わり?なぜ大富豪は寄付をするのか
ロバート・スミス氏(56)は投資会社ビスタ・エクイティ・パートナーズを創設した起業家。
米紙フォーブズによると資産総額はおよそ50億ドル相当でアメリカに住む黒人の中では最も多い。
スミス氏は米ジョージア州アトランタにあるモアハウス大学(Morehouse College)での35分に渡るスピーチの終わりに「2019年の卒業生のローンを一掃するための助成金を創設している」「ローンによって不利になることがないように」「アメリカン・ドリーム」を高らかに宣言。
過去にも母校の1つであるコーネル大学院に5,000万ドルの寄付や、がん研究や芸術の分野でも多額の寄付を行っている。
モアハウス大学はアフリカ系学生が中心の男子大学でスミス氏は「この国で8世代暮らしてきた一家として、皆さんの乗る『バス』に少し燃料を入れよう」と粋な発言を繰り返していた。
スミス氏「2019年卒業のクラスメートたち、素晴らしい日だね
ご両親、ご親戚、クラスメートの皆さん、おめでとう!
立ち上がって振り返って周りのお祝いしてくれている人を見てみてください。
さぁ座ってストレッチしてください。
まずは偉大なる母に感謝します。」
とても聴き取りやすいスピーチで、
大富豪だけど周りの人に感謝していて、すごく気さくな雰囲気。
出典:http://agora-web.jp/archives/2032553.html
アメリカ大富豪寄付金ランキングで1位常連、2017年の寄付額は28億ドル(約3,150億円)のバークシャー&ハサウェイ社の会長であり投資家のウォーレン・バフェット氏もこんな発言をしている。
「幸運な1%として生まれた者は、残りの99%の人間のことを考える義務がある」
CNBCのインタビューで「あなたにとっての成功とぜいたくとは?」と質問されたバフェット氏は、
「成功とは自分が好きな事をしていい結果を出す事だ。毎日自分の好きなことをできるなんて、最高のぜいたくだよ。たくさん稼いでいるからと言って、ぜいたくな暮らしをする必要はない」
出典:https://zuuonline.com/archives/83268/2
バフェット氏は「生涯における資産の半分以上を寄付するギビングプレッジ活動」を2006年から始めている。
寄付金ランキング上位常連の2017年2位のビルゲイツ夫妻もだ。バフェットも多額の投資をしているビル&メリンダ・ゲイツ財団は世界最大の私立財団だ。
ビル・ゲイツ氏は、数年前のテレビのインタビューで、多額の寄付をすることについて
「消費には限度があり、本当に自分が価値があると思えるものが何なのかを、考えなくてはいけない」
と答えている。
出典:https://gekirock.com/news/2010/09/avril_lavigne_4.php
カナダ人の人気歌手アヴリル・ラヴィーンさんも2010年に病気や障害を持った子供たちをサポートする基金を作ったり、近年には自身も苦しんだライム病の基金も設立してサポートを続けている。
アヴリル復活ジャパンファンイベント Avril Lavigne’Head Above Water’
2008年のリーマンショック以降、近年寄付金額は年々増加している。
2017年は特に2年続いた株式市場の好調で富裕層の手持ち金が増えたことで寄付金額が増えている。
大富豪たちが寄付をする3つの理由
①寄付金は非課税となるから
米国では非課税対象団体(Exempt Organizations)に寄付を行うと、寄付額の最大50%を控除できる。
カラクリは「ふるさと納税」と同じで、寄付をた多分は非課税になったり、税金が優遇されるので節税になる。
また、出身大学に寄付する大富豪はとても多い。
- ナイキの創業者であるフィル・ナイト氏はオレゴン大学に5億ドル(約560億円)
- オラクル会長のラリー・エリソン氏は南カリフォルニア大学に2億ドル(約220億円)
- 映画監督のジョージ・ルーカス氏も南カリフォルニア大学にこれまで2億ドル(約220億円)
勿論、せっかく寄付するなら自分の母校や可愛い後輩の役に立てたい。
大学に名前は残せるし、評判も上がるし、自分の好きなところに投資しながら節税もできるしいいことしかない。
そして、寄付を受ける大学も毎年運用収益を得て巨万の富を築き続けている。
- ハーバード大学は約4兆円
- テキサス州立大学は3兆円
- イェール大学も約3兆円
アメリカ内の大学を合わせると約60兆円の資産!
出典:https://limo.media/articles/-/3597
運用目標利回りは年8%程度でスペシャリストが運用している。
結果、大富豪が大学に寄付した巨額の富は再度市場を潤している。
勿論常いいい時ばかりではないだろうが、すごいいいスパイラルだ。
また、よく聞くのが資産はたくさんあるけれど、かなり寄付してる人。
一体今後どうやって生きていくんだろう?
どうやらアメリカでは控除額が課税対象以上の場合には、控除の繰り越しが可能とのことです。
所得控除額が所得額を超えると翌年の所得税がゼロになることもあるとか。
②「Pay it Foward(ペイフォワード)」の精神を大事にしている
「Pay it Foward(ペイフォワード)=恩送り」という考え方も影響しているのではないか。
誰かにしてもらったことをその人ではなく違う人にしてあげる。
つまり近年日本で見なくなってきた「先輩が奢ってくれたから、後輩に奢ってあげよう」ということ。
アメリカでたまにニュースになる、「コーヒーショップでコーヒーを買ったら前の人がもう払ってくれてた。じゃあ次の人の分を払おう」というやつだ。
誰かが喜ぶことを行なって自分も幸せになる。
いいことしかない。
これいつも疑問に感じるのはどうやって次の人のお会計金額を知るのだろう?
コーヒー定額制?
またアメリカやヨーロッパの多くの国、人々の思想的背景にはキリスト教がある。
寄付や募金、ボランティア活動などは家族単位でごく自然に行ってきた日常の一部なのである。
③成功した「後」が肝心だから
人生にはいいこともあれば悪いこともある。
最近の大富豪ならなおさら昔は貧乏や苦労をしてやっと富を築いた人も多いだろう。
中国でも「塞翁が馬(さいおうがうま)」という故事がある。
塞翁に悪いことが起こり、近所の人がお悔やみをいうとよい結果をもたらす。
良い結果に対して周りがお祝いをいうと、今度は悪いことに転じる。
悪いことを回避したいなら最初にいいことをする。
自分ではコントロールできない運をなんとかしようという願掛けのようなものだ。
大富豪には迷信、ルーティーンや占いを重んじる人も多い。
昔から言い伝えられていることは真理に近い。
また、社会貢献をしていることを世間にアピールできれば好感度も上がり不興を買いづらい。
「金持喧嘩せず」
いらぬ喧嘩を買わないようにすることが大事だ。
実は日本でも寄付が伸びている!?すぐにできる寄付は?
大富豪の多額の寄付には遠く及ばないが、
少額から手軽に行える「ふるさと納税」が一般的に普及したこともあり、日本でも寄付のハードルが下がっている。
なんと7年間で寄付額が1.5倍に増えている。
税金が控除される
実日本の寄付額増加の要因もアメリカと同様、税金控除での節税が大きい。
「寄付金控除」は2,000円以上の寄付から対象で3月の確定申告で所得金額から控除される。
「寄付金控除」対象
・国、地方公共団体
・公益社団法人(シルバー人材センター 等)
・公益財団法人(日本ユニセフ協会 等)
・政治活動に関する政党や政治資金団体など(自民党 など)
・認定NPO法人(社会から必要とされていることを証明する基準をクリアしたNPO。内閣府HPに一覧あり https://www.npo-homepage.go.jp/about/houjin-info/shokatsunintei-meibo)
・特定公益増進法人(自動車安全運転センター、日本赤十字社、私立学校など)出典:https://kakakumag.com/money/?id=13286
また気軽にできる寄付として
- ふるさと納税
- クラウドファンディング
- 遺贈寄付
- ポイント寄付
- 24時間テレビなどコンビニ募金
などがある。
山下智久氏も高校生の時にコンビニで小銭を全部寄付していた。
日本の寄付が増えた背景としては東日本大震災や熊本地震がある。
未曾有の大災害をテレビやニュースで見て何かできることがあるとボランティアをしたり寄付をしたり。
毎年3月11日にヤフーの特設サイトをクリックすると寄付ができるキャンペーンなどハードルがどんどん下がっている。
ソフトバンク社長の孫正義氏は震災で総額100億円の寄付を行い、役員報酬を引退まで寄付し続けると発表した。
素晴らしい内容で賞賛される一方で、「寄付を話題にしたビジネス」などと多額の寄付をしているにも関わらずに世間から酷評もされている。
日本の寄付は災害ネガティブな時に話題になりやすい。
困ってから助けを呼ぶ文化?
日本で多額の寄付をするとどうやら叩かれたり、やっかまれたり、偽善者だと言われるのでいいことをしているのにこっそりしている傾向も見られる。
ジャニーズのタレントや2018年に引退した安室奈美恵さんなども公にはしていないが多額の寄付をしている。
出典:http://japanese.visitkorea.or.kr/jpn/CU/content/cms_view_296327.jsp
安室ちゃんの寄付金額として、記録が残っているのはこちらです。
アメリカ同時多発テロ事件の義援金として、1200万円を寄付。
2004年スマトラ島沖自身の義援金として、1000万円を寄付。
東日本大震災の義援金として、赤十字社に5000万円を寄付。
出典:https://pixls.jp/I0001551
【安室奈美恵|ファイナルスペース|Final Spaceブログレポ】チケットや写真撮影は?
野球選手ダルビッシュ有氏も「ダルビッシュ有 水基金」を2007年3月に開始したり、東日本大震災では5,000万円を寄付、その後も継続して寄付をしている。
出典:https://matome.naver.jp/odai/2136643356748088501/2136643643948930003
また『窓ぎわのトットちゃん』の作者黒柳徹子氏も「トット基金」を設立したり、アジア人初のユニセフ親善大使として貧困問題に取り組んでいる。
継続して活動を続ける人はどうやらバッシングされづらいようだ。
振り返ればアメリカの大富豪も寄付ランキング上位を何年にも渡りキープしている人が多い。
ただお金を寄付をするのではなく、寄付金の使い道が透明な目的を持った基金を設立したり継続的に行うことが信頼となり評価される。
寄付は信頼貯金でもあるのだ。
まとめ
アメリカでは困っている人を助ける寄付ももちろんありますが、学生のためだったり研究のためだったりもっと積極的でポジティブな寄付も多いイメージで
日本では困っている人を見たら助けるのが寄付というイメージ。
最近はポルカやキャンプファイヤなどのフレンドファンディング・クラウドファンデイングが流行ったけど、
日本ももっと前向きな寄付がポンポンし合える世の中になればいいな。
節税やら税金対策と思われがちだし実際その側面もあるけれど、
力を貸して欲しいと思っている人に見返りを求めずに寄付できるのはかっこいい。
大富豪の学生ローン肩代わりの話からアメリカと日本の寄付文化の違いの話に着地してしまって戦々恐々としていますが、私、もともと大学では英語文化論という文化専攻してましたw
では、また⭐︎